夜中に忍び込んで。
働き出してしばらく経った頃です。
どうも、折パイが上手く出来ない。
折パイは、小麦粉を練った生地でバターを包んで、綿棒で伸ばして4つに折って、寝かしてからまた伸ばして、3つに折る。
それを繰り返すんです。
そのお店のチーフはあまり機械を導入しない方針だったんです。
今だったら、パイは折るにしても「パイローラー」って機械があって楽です。
それをボンシェールでは手で折ってました。
ボンシェールには、パイローラーもキッチンエイドも無かったです。
今にしても思えばそれもいい経験でした。
しかし、どうもパイ生地を折るのがうまく行かない。
今にして思えば、根本的に理解できていなかったようでした。
全然うまく出来ない、ちゃん折ったつもりでも伸ばして焼いてみると浮かない。
パイ生地なので焼いた時に浮かないと意味がない。
とりあえず、何回も挑戦するしかなくて。
すると一日の時間が足りない。
いいことに、私はお店に一番最初に出勤していたので、鍵をもらっていました。
それでやったのが…。
時間がないなら作ればいい。
なんと、夜中にお店に忍び込んで、パイ生地を折る練習。
そもそも、なんで夜中?
どんくさくて物覚えの悪い私は人よりも時間が必要でした、それを通常の時間でやってたらこいつは全然だめだな時間が掛かり過ぎるって思われたくなくて。
それで夜中に忍び込んで練習して、また一度帰って出勤。
家が近かったのも良かったです。
生地に入れる水の量の加減、生地の寝かし具合、バターの硬さ。
理解するのに時間がかかりました。
まぁこう言うことです。
生地に入れる水分が少ないと伸ばして行く時に千切れて浮かない、水分が多いとバターと馴染んでしまってこれも浮かない。
折ってる途中で寝かす時間がって、長く寝かすと、バターだけ硬くなって伸ばした時にバターが分断されるし、寝かしたりないと生地が伸びない。
それのちょうどいいタイミングですね。
何かを覚える時、イメージするのが重要だと思います。
バターの状態、生地の状態、季節による温度とか「きっとこんな感じかな」的な事をイメージする感じですね。
闇雲に数をこなしてもだめですよね。
鈍臭い私には、みんなのように直感的にできない分その作業を理解する必要がありました。
私が夜中に忍び込んでいる事はどうやらチーフにはほ「とんど最初の頃からバレている」様でした。